真郷は一瞬驚いたような顔をしたが、それきり何も言わずに小夜子の顔をじっと見つめている。 さすがに気まずくなって、小夜子は苦笑した。 「あの……どうかした?」 それだけ言うのがやっとだった。挙動不審な変な女に思われたのではないかと、小夜子は半分泣きそうだった。 しかし、返ってきた反応は小夜子の想像とはだいぶ違っていた。 「……ごめん。何でもないよ。こちらこそ、宜しく」 真郷はそう言って視線を反らす。 初めて彼が小夜子に向けた言葉は、微かに優しさを孕んでいた。