石畳の先にある本殿へ、二人は歩みを進めた。
「それじゃ、お願いしよっか」
いくらか小銭を賽銭箱へ入れ、美那江は鐘を鳴らした。それから二拍一礼し、じっと目をつむった。
小夜子も美那江を真似て二拍一礼し、ぎゅっと目を閉じて願いを込める。
お願いします、夜叉様。もしこの願いを叶えてくれるなら、私は何でもします。
ひとしきり願をかけると、小夜子は目を開いた。
横に居る美那江を見ると、彼女は何もない境内を食い入るように見つめている。
「お姉ちゃん?」
小夜子の呼び掛けに、美那江ははっとしたように境内から目をそらした。
「──きっと、小夜子ちゃんのお願い、叶えてくれるわ」
小夜子に微笑みかける美那江の顔色は、どこか蒼白く見えた。
まだ日暮れでもないのに、頭上で鴉がギャアギャアと騒ぎ立てている。
「帰りましょう。──もうじき雨が降るわ」
美那江は小夜子の手をとり、神社を後にした。繋がれた美那江の手は、先程より冷たかった。



