家に帰ると、両親はやはり夏哉の看病に追われていた。
居間のちゃぶ台には、小夜子の為と思われる簡素な食事が用意されている。
小夜子は夏哉の部屋の前へ行き、襖の奥へ小さく声を掛けた。
「おかあさん、ナツは……」
「ああ、おかえりなさい。お母さん今日は夏哉を看てあげないといけないから、ご飯、温めて先に食べてね」
母の返事は、ひどく慌ただしいもので、小夜子はそれ以上何も訊けなかった。
小さく返事をして居間へ戻ると、言われた通り夕食を温め、口へ運ぶ。
途中、じんわりと視界が滲んで、ご飯が塩辛く感じた。
夕食を済ませると、風呂に入ってすぐに布団に潜り込む。
早く明日が来ればいいのに……そう思いながら、眠りについた。



