空が橙色に染まり始めたことにも気付かないほど、二人は夢中で遊んだ。
「もう夕方だね」
ぽつりと、少年が呟いた。聞こえない振りをして、小夜子は無言で俯く。
「どうしたの?どこか、痛いの?」
そんな小夜子を気にかけて、少年はしゃがみこんだ。
すると、小夜子の目からポロポロと涙が落ちてくる。少年は大きな瞳をぱちくりさせて、その光景を眺めていた。
夕陽に涙が反射して、橙色の宝石のように零れては消えていく。
「……泣かないで」
困ったような、けれど優しい響きの声だった。小夜子は顔を上げる。
「さみしいの……。おうちにかえったら、まさとくんにあえないもん。もっとあそびたいよう……」
それでも止まらない涙を、必死に堪えようとする。しゃくりあげる小夜子の頭を、少年は優しく撫でた。



