償いノ真夏─Lost Child─



小夜子にとって、それは特に不幸なことではなかった。

たとえ村の子供に虐められても、夏哉が傍に居て守ってくれる。

「だから、まさとくんがはじめてのお友だち」

そう言われて、少年はいっそう嬉しそうに笑った。

「それなら、さよこちゃんのこと、ぼくがまもってあげる」

小夜子の目には、その眩しさがまるでお伽噺の王子様のように映った。

常に傍で支えてくれる夏哉は小さな騎士。

唐突に現れて、心を奪っていく彼は、小さな王子様。


その後、二人が仲良くなるまでに時間は必要なかった。

少年は物知りで、色んなことを教えてくれた。野鳥や野花の名前──小夜子の知らないこと、知らない世界を見せてくれた。

幼いながらに、小夜子が彼に惹かれるのは当然のことだったのかもしれない。