真郷は懐中電灯を拾うと、再び辺りを照らした。
「ちょっと昔の話しても、いいかな──?」
小夜子はコクリと頷いた。それでやっと、真郷は心を落ち着かせる。
「ありがとう。人に話すのは初めてなんだ。でも、小夜子には全部話しておきたいから」
真郷はぽつりぽつりと自分の過去について小夜子に語った。
孤独な幼少期、母の浮気、トラウマ、両親の離婚──それらを全て小夜子にさらけ出すと、心が軽くなった気がした。
小夜子は真郷の話を、真剣な表情でじっと聞いていたが、途中からは涙を止めることが出来なくなっていた。
「真郷くんがそんな環境で育ったなんて……それに、この村に来たのも、それが理由だったのね……」
「うん。だから俺、どうしても母さんが好きになれないんだ。それに、父さんが好きだからさ。これ以上寂しい思いさせたくないんだ。だから、東京に帰らなきゃいけないとしても父さんと暮らしたいんだよ……」



