直感で母だと理解する。
「──何?」
「村の中、少し見て回らない?学校への道とか、分からないでしょう?」
声が震えているのは、きっと泣いた後だからだ。
そうやって母は、自分が弱っているときだけ、真郷を頼る。
慰めて欲しいのだろうか。離婚した男の遺伝子で作られた、己の子供に。
「──必要ないよ。学校の場所なら分かるし。今日はもう、疲れたから」
疲れた。
本当に疲れた。
慣れない土地の空気、視線……そこに立っているだけで目眩がする。
会話を終わらせると、真郷は僅かに湿った感触のある布団に身を埋めた。
微かなかび臭さが、不快感を煽る。



