真郷の脳裏に浮かんだのは、あの時の母親の姿だった。
男と女。
あれが男女の在るべき行く末だと考えるだけで、嫌悪感が蘇る。
ああはなりたくないと、そう思って生きてきた。
ああはなりたくないからこそ、小夜子に対する想いも封じてきた。
けれど、もう。
小夜子に打ち明けてしまった今、情のままに走れば、きっと二人とも傷付くだけだ。
──それだけ、汚れを知らない小夜子を大事にしたかった。
「ごめん……!」
激しく拒絶する真郷に、小夜子は狼狽した。
「真郷くん……ごめんなさい、私が……お願い、嫌いにならないで……嫌いに……」
「違うんだ、小夜子が悪いんじゃない。ごめん、俺、怖いんだよ。俺だって不安だけど、小夜子のことちゃんと大事にしたいんだ。だから今は──」



