真郷はもう一度、今度は優しく、小夜子の細い体を抱き締めた。
懐中電灯が床に転がり、カラカラと音を立てた。
辺りを照らしていた仄かな灯りは、漆黒の闇に飲まれた。
「あ、灯りが……」
「──きゃっ!」
真郷は懐中電灯に手を伸ばす。その時、バランスを崩して小夜子ごと倒れ込んでしまった。
「真郷くん……?」
「あ、ああ。ごめん、怪我ない?」
「うん──でも、あの……」
何か言いたげな小夜子を見て、真郷はあることに気付いた。
「わぁっ!?ごめ──」
掌がやわらかいものに触れている。それが何か気付いた瞬間、真郷は慌てて手を離そうとした。
しかし、その手を小夜子が掴んだので、真郷は更に驚愕した。
「え!?ちょ、小夜子……」
「私……不安なの。お願い真郷くん。このまま……」
小夜子が何を言っているのか、初めはわからなかった。だがそれを理解した時、真郷は小夜子の手を振り払って身を起こした。



