小夜子は体育用のマットの上に、膝を抱えてうずくまっていた。
小さな肩が震えている。
「小夜子……」
「来ないで!放っておいてよ!」
真郷が近づこうとすると、小夜子は顔を上げないまま、声を荒げた。
こんなに感情的な声は、今まで聞いたことがなかった。
真郷は驚いたが、それでも立ち去ろうとはせずに、小夜子に歩み寄る。
「来ないでって言ってるじゃない!嘘つき!真郷くんなんて大嫌いよ!」
「ごめんね、小夜子。俺は確かに嘘つきだ──小夜子に嫌われても、仕方ないかもしれない……でも……」
「え……あ……っ!?」
小夜子は驚いて顔を上げた。真郷の心音を近くに感じる──抱き締められている。



