「ごめん……」 ただ一言、そう伝えるのが今の真郷には精一杯だった。 校内の雑踏が静まり返ったように、小夜子の耳にはただひとつ、真郷の声だけが木霊する。 「う……そ……嘘だよね?嘘だって言ってよ、真郷くん。お願い……」 「……」 「そんなの……そんなの聞きたくなかったよ……っ!」 小夜子は押し殺すようにそう言って、真郷から逃げるように背中を向けた。 「小夜子!」 呼んでも、その声は小夜子には届かない。小さな背中は、遠ざかるばかりだ。