その時、笑っていたはずの唇がひきつるのを、真郷は感じていた。
小夜子が次に何を言うのか、容易く見当がついてしまった。
「──ん?」
喉がひくついて、それ以上は返せなかった。
手のひらに汗が滲む。
「真郷くん、東京の学校に行くなんて……嘘、だよね?」
「何でそれを──」
「先生達が話してるの、偶然聞いちゃったの。でも、真郷くんはずっと、一緒だって言ってたから……私……」
最後の方は、ほとんど消え入りそうな声だった。
それでも小夜子は必死に、真郷の答えを求めてくる。
もう、これ以上の偽りを重ねることは出来ない。
真郷はなるべく小夜子の瞳を見ないようにして、口を開いた。



