そう言っても、小夜子は浮かない顔のままだった。
「──姉さん、大丈夫か?」
「あ……うん。何でもないから、大丈夫。そろそろ予鈴鳴るよ。ナツ、戻った方が良いかも」
「ああ、そうするけど……」
夏哉はチラリと真郷を見た。真郷はその意図を汲み取って頷く。
「それじゃ、もし具合悪くなったらすぐ保健室行けよ?」
それだけ念を押して、夏哉は颯爽と行ってしまった。
「ナツって、過保護だよね。なんかお父さんみたい」
「言えてるかも。でも夏哉が聞いたらショック受けるよ、それ」
「ふふ。それじゃあ、二人の秘密にしようね」
真郷がそうしよう、と答える間もなく、小夜子は次の言葉を発した。
「──ねぇ、真郷くん」



