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例の一件から一週間ほど経って、やっと小夜子と夏哉が学校に来た。
久しぶりに会った二人は、以前と変わらない様子だった。
「ごめんね、色々と心配かけちゃって」
そう言いながら困ったような笑みを浮かべる小夜子に、真郷は首を振った。
「気にしなくって良いって。でも、二人が居ないうちに校内が卒業ムード一色になってるんだけど」
「そっか、もう三月なんだね。早いなぁ……なんだか寂しい」
「何言ってるんだよ姉さん。別に、卒業したからって何か変わるわけでもないだろ。同じ村に住んでるんだからさ。なぁ、真郷?」
夏哉の言葉が胸に刺さる。今までなら、それに笑って頷けたのだろう。
真郷はすぐに同意できなかった。その迷いを、知られてはいけないと分かっていても。
「……真郷くん?」
小夜子の不安げな声で我に返ると、真郷は取り繕うように笑顔を作った。
「夏哉の言う通りだよ。小夜子は心配性なんだから」



