帰宅し、九郎の散歩を終えてから、真郷は祖母の部屋へ向かった。
「おばあちゃん、いる?」
障子越しに声を掛けると、衣擦れの音が聞こえた。
「真郷か……おはいり」
落ち着いた声が返ってきて、真郷は安堵した。やはり、祖母を前にすると少し緊張する。
「そこへお座り。珍しいじゃないか、お前から来るなんて」
祖母は何か書き物をしていたようで、筆を止めると書き途中であろうそれらを文箱にしまった。
「……何か用かい?」
真っ直ぐに真郷に向き直ると、祖母は瞳をそらさずに訊いた。
真郷は畏縮しつつ、口を開く。
「俺はこの村の人間じゃないから分からない。だから、おばあちゃんに訊くのが正しいことかも分からないんだけど」
真郷は胸に滞っているものを、少しずつ吐き出した。



