あの、自分を見た瞬間の父親の異常な怯え方が、なんとも不気味だったのだ。
そして、何故、あの時「深見の……」と言ったのだろうか。
あの父親の社交性は皆無であり、小夜子や夏哉が家で父親と一般家庭のような会話をしているはずもない。
いくら真郷が珍しい容姿をしているからといって、初対面で言い当てることが出来るものだろうか。
思い返せば、疑問ばかりが浮かんでくる。
しかし、真郷はそれらの疑問を胸の内に留めた。
もうこれきり、村を離れてしまうならば、深見の名は自分とは無関係になる。
それならば、もう他人に干渉するのも、されるのも避けたかった。



