真郷はその瞬間、買い物袋を投げ出すと全速力で小夜子の元へ走った。
「小夜子ッ!」
倒れたままの小夜子を抱き寄せ、そのまま身をかわす。
バランスを崩して倒れたが、それは父親も同じだった。
真郷は素早く起き上がると、小夜子を庇うように背に隠した。
「ふざけんなよ!娘に暴力振るって何が父親だ!小夜子がどんなに辛いか、痛いかわかってんのかよ!?」
自分でも驚くほど大きな声で、真郷は威嚇した。
今まで眼中になかった第三者の介入に、一番驚きを隠せないのは父親の方だったようだ。
尻餅をついたまま、真郷を驚愕の表情で見上げる。
真郷はといえば、毅然とそれを見下ろしていた。
その瞳には、凍りつくほどの冷たさと、怒りが滲んでいた。



