それを見逃さなかった小夜子が反抗してくるが、彼女の表情もまた、普段の柔らかいものだった。
それからいつもの調子で他愛ない会話を交えていれば、小夜子の家に着くのはすぐの事だった。
しかし、家が見えた所で、小夜子の表情が曇った。
初めて見る小夜子の家は、なんとも粗末なものだった。
屋根は瓦が剥がれ、壁は全体的に薄汚れており、機能を果たさない破れた障子が縁側から覗いている。
荒れ果てた庭には、焼酎の空瓶がいくつも置かれていた。無造作に投げ出されたものは、割れて散らばっている。
繋いでいた手が震えている。真郷はきゅっと握り返した。



