「小夜子」
落ち着いた口調で名を呼べば、小夜子は顔を上げて、真郷を見る。
「俺は、何があってもずっと、小夜子の味方だから。だから、笑って。誰に何を言われても、俺の前では、いつもの小夜子でいてよ」
真郷の言葉に、小夜子の瞳から、ついに涙がこぼれた。
それは止まることなく、白い頬を伝って落ちる。
小夜子は買い物袋を雪に投げ出し、真郷の胸にすがり付いた。
そんな小夜子を優しく受け止め、真郷は彼女が落ち着くよう、あやすように髪を撫でる。
「大丈夫、大丈夫だよ」
小夜子は小さな子供のように声を上げて泣いた。その姿は、脆く、危うく、けれど、いとおしい。



