十二月。 底冷えの寒さが、夜叉淵を覆っていた。 長野の冬は厳しい。一面が銀世界となった村の風景を、真郷は複雑な心情で眺めていた。 ──もう、時間がない。 夏哉にも、小夜子にも、ずっと打ち明けられずにいること。 東京の高校に受かり、進路も決まってはいたが、二人には黙っていた。 言うタイミングが無かった、などというのは、所詮言い訳にしかならない。