「あれは堀川の美那江(みなえ)じゃ。祭りの後に狂って、蔵に閉じ込められたはずなんじゃ。堀川には婆ちゃんが言ってやる。忘れるんじゃ、真郷。忘れなきゃ、いけん。あれに関わっちゃいけん」
祖母の気迫に圧され、真郷はこくこくと頷いた。
「この事は、婆ちゃん以外に言っちゃあいけん。百合江にも、フミ子にもだ」
頷いたのを見ると、祖母は真郷に対して、初めて微笑んだ。
いつもの冷たい祖母からは想像もつかない、慈愛に満ちた表情だった。
「お前は約束を守れるいい子じゃ。婆ちゃんにはわかっとる。婆ちゃんが、ちゃあんと真郷を守るでな……」
祖母はそう言うと、真郷の頭を優しく撫でた。



