しばらく動けずにいると、襖の奥から人の気配がした。
「──真郷か?」
姿を見せたのは祖母だった。
いつもは敬遠する祖母のしわがれた声に、今はひどく安心した。
「ただいま、おばあちゃん」
そう返すと、祖母はニコリともせずに続けた。
「フミ子も百合江(ユリエ)も帰っておらん。遅くなるそうだ」
百合江というのは母だ。つまり、今は祖母と二人きりということだった。
そこで、真郷はハッとした。
あの不気味な女について、祖母なら知っているのではないか。
「お、おばあちゃん」
恐る恐る、真郷は切り出した。
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