償いノ真夏─Lost Child─



その瞳からは、何故か、怒りよりも哀しみの感情が強く伝わってきた。


「──苦シイ」


ぽつりと、女が言った。その声色は、先程までと違った。

血の通った、そんな。

そう思った時、ふっと肩を押さえていた力が抜けた。

一瞬の隙をついて、夏哉が女を突き飛ばしたのだった。


「真郷、逃げるぞ!」


夏哉の声に我に返った真郷は、先を走る夏哉を追い掛けた。

後ろは振り向かなかった。

そんな勇気はない。
ただ、この場から逃げ出したかった。