深見の家から夜叉比女神社までは距離がある。
だから九郎の散歩は、決まって神社を折り返し地点にしていた。
緑を増した木々に囲まれた小道を、九郎に続いて歩く。
九郎がハイペースだった所為か、神社に到着するまで時間は掛からなかった。
階段を上りきった所で、夏哉と真郷は息を切らした。
二人で呼吸を整えていると、九郎が突然吠えた。
何事かと顔を上げれば、御神木の傍に人が立っていた。
髪が長いのを見ると、どうやら女のようだ。
その女を威嚇するように、九郎は唸っている。
「九郎、どうしたんだよ」
九郎の豹変に、夏哉は困惑した表情で真郷を見た。



