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「九郎、そんな引っ張るなって!」
九郎のリードを持った夏哉が、引きずられながら叫ぶ。
久しぶりに夏哉が散歩してくれるのが嬉しいのか、いつもよりハイペースの九郎を見て、真郷は微笑んだ。
「ったく。よくこんなに育ったな九郎は」
悪態を吐きながらも、夏哉も嬉しそうだ。
「当たり前だろ、前世は源義経なんだから」
「マジかよ……って、それは嘘だろ」
「本当だよなー、九郎」
九郎はキョトンと真郷を見つめたが、次の瞬間、返事をするように一吠えした。
「ほらみろ」
「──壮絶な前世だな」
他愛ない会話をしながら、夕暮れの散歩コースを歩く。



