いっそ臆病者の道化だ、と嘲笑ってくれたなら……そんな真郷の思いを、夏哉はまだ、知らないのだ。
「──そっか。高校行っても、オレ達は変わらないよな」
「夏哉……」
「何だよ、湿っぽいな。先に高校行くのはオレじゃなくて真郷の方だろ」
夏哉は笑って、真郷の背を叩いた。
「久しぶりに九郎の散歩させてくれよ!」
重い空気を振り切るようにそう言って、夏哉は先を歩き出す。
その背を追うように、真郷も歩いた。
たとえ、背が伸びても、口調が大人びても、夏哉は夏哉のまま。
昔と同じ真っ直ぐな視線は、きっと今でも、真郷の心を見抜いている。



