もしかしたらこれは夢で、目が覚めたらこのおかしな夢から覚めるんじゃないかって思ったけど、そんなに甘くなかった。

眠れてもすぐ目が覚めて、また眠ってもすぐ目が覚めての繰り返しで、このおかしな夢からも逃げられる気配はない。

つまりこれは、夢じゃないってことみたいだ。

ずっと布団に寝転がってたから、制服はしわしわになっていた。

これじゃあ学校に行けないや。

でもその前に、もしもう二度と学校に行くことができなかったら。

ううん、そんなことない。

だってこんなのおかしいじゃない。

こんなわけのわからないところに、いきなり連れてこられるなんて。

ふすまを開けると外は明るくて、ちょっと眩しかった。

広い庭だった。

しかも、何か違和感がある。

そうだ、どう考えてもこの景色、春じゃない。

だって、春に枯れ葉が落ちてるはずがないもの。

季節まで変わっちゃってるなんて。

恵美は、クラスの皆は、どこに行っちゃったんだろう。

お父さんとお母さん、どうしてるかな。心配してるかな、やっぱ。

泣いたって、何か変わるわけじゃないのに。

涙が勝手に出てきてしまう。

「朱音様、ですね。お早いですね」

いきなり声をかけられたもんだから、どきっとしてしまった。

立ってたのは昨日の女の人で、名前は確か朝乃さんだったはずだ。