美術室に入ると、描きかけの課題があるだけで誰もいない。



「静か…本当に準備室にいるのかな?」


補講だというのに、私一人。

先生は、美術室の奥の扉に繋がっている準備室にいる。



「…こんなことなら、きちんと課題提出すればよかった」




課題を提出する日、私は一人で絵を描いていた。

周りはさっさと提出し、美術室から教室に戻って行く。

「終わったー!夏休みだぁ」

「この課題、完成させないと補講だもんねぇ」

「夏休みまで学校なんかに来たくねぇよな」


そう。この課題を提出しないと、夏休みの三分の一は美術の補講になる。


「…」


教卓の前にいる、沢先生を見た。
課題を提出して行く生徒の頭を、撫でていく姿が目に入った。


「…」


いいな…



私も、頭撫でてもらいたい。




けど、それ以上にー…








夏休みに、先生に会えなくなるのが苦しい。