ピアニストと野獣

「あ…。」


すっかり忘れてた…。


私は何と言えばいいのかさっぱり分からず困っていた。


━━どうしよう…。


チラリと西園寺の方を見てみると、


「――!?」


な、なんと!


あの西園寺が真っ赤になっていた。


何か返事をしてあげないと…。


「あ、あのっ…。西園寺━━」
「いいよ!」


西園寺は私の言葉を最後まで聞かずに途中で止めて話し出した。


「俺、沙羅ちゃんの気持ち分かってるから返事はいいよ…。」


「西園寺…。」


「じゃ。」と言って、とぼとぼと私たちから離れていった。