ピアニストと野獣

私に気がつき立ち上がる陸。


「沙羅!なんでいるんだよ!」


とぼけた顔で訊ねてくる。


―――それはこっちのセリフなんだけどな…。


「――えっと…。」


私は迷子になってしまったことを言うのが恥ずかしくて、どもってしまう。

と言うか、言ったら言ったでバカにされるのが嫌だっただけなんだけどね…。


そうも言ってられず話すことを決意した。


「――ま……迷子になりました…。」


陸とニ、三回瞬きをした後、案の定、爆笑の嵐だった。