ピアニストと野獣

「――何でもない!」


私は恥ずかしさとムカつきで、そっぽを向いてしまった。


そんな私の姿に呆れたのか、西園寺はため息を吐き手を差し出した。


「いつまで座ってるつもり?」


その言葉で更にムカついた私は、西園寺の手を払い除けた。


「結構!」


そう吐き捨てて、スクッと立ち上がり荷物をまとめて一人で歩きだした。