ピアニストと野獣


「うーん…。」
と首に手をやり、私を見た。



「最初と言うか、みんなで沙羅のピアノ聞いた時は、黒髪が綺麗でクールで俺の好きなピアノだって思った。」



―――――“好き”……


何気ない会話の一部分なのに、その単語を聞いた瞬間、“トクンッ…。”と胸が跳ねた。



「今現在でも、」




「――っ!」




西園寺は私の毛先をつまんで、そのまま私の髪にキスを落とした。




「この黒髪は綺麗。」



次に頬――…



「いつもクールだけど、よく笑う。」





最後に私の両手を包み込んだ。




「そして、今も昔も沙羅のピアノは好きなんだ。」




「…。」