ピアニストと野獣



「合宿の時声をかけたの沙羅だったの前に話したよね?」



「うん。」



たしか泣いてる私に手を差し伸べてくれたのが西園寺だったっけ…。



「あの時、沙羅が泣いてるって分かってて声をかけたんだよ。」



「―――ん…?」



あれより前に西園寺と出会ったっけ?



「プッ…!そんなに考え込まなくても…。」



「だって!思い当たる節がないんだもん!」



「まぁ、沙羅が俺を見たのはあの時が初めてだったからね。」



んー…。

更に意味がわからない…。



「だから、ピアノのコンクールで沙羅を見たんだよ。」



ピアノコンクール…。


確かに小さい頃、今よりたくさんのコンクールに出てたっけ。