ピアニストと野獣


「その曲、カノン?」



弾き終えると、窓の外を眺めながら西園寺が口を開いた。



―――やっぱり変。



「そうだよ?……ねぇ、何かあった?変だよ?」



私はそう言いながら体を後ろに向けて椅子にまたがるように向きを変えた。



西園寺とは背中と背中を向け合わせるようになっている。



私の目の前には細長い窓があって、そこからは中庭が見える。



「俺、来週誕生日。」



「え?…そうなの?」



「うん…。なんかパーティーするらしいから来て?」



「……はぁ?」



悩みじゃないの?



私は訝しげに西園寺の方の目を向けたけど、西園寺はニコッと笑ってこっちに来て白い封筒を私に渡してきた。



「ちゃんと来てよね?」



そう言って教室を立ち去った。



封筒の中には一枚の招待状が入っていた。