ピアニストと野獣

「それよりさ、陸と千夏さんと東藤さんは?」


私は握られた手を振り回しながら言った。


「陸と姉ちゃんは昨日遊びすぎてダウンしてて、東藤さんは留守番。」



陸と千夏さんがダウンしている様子が頭に浮かんだ。



「あー…。なるほど。…それじゃぁ何か体にいいものを買った方が――」



ギュッ…



「…?どうしたの?」


西園寺が突然手を強く握りしめてきた。


西園寺を見ると、捨てられた子犬の目をしていた。


「俺より陸の方が心配?」


「はぁ!?べ、別に陸だけが心配じゃないし!千夏さんだって心配だよ?そもそも、西園寺は元気でしょ?」



私はまっすぐな西園寺の瞳にワタワタした。