ピアニストと野獣

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「沙羅!これは何だ?」


「たこ焼き。」


「買ってい――」
「ダメ。」


今さっきからこんな調子。


ビーチが近いためなのか、出店が結構出ているのだ。


それが西園寺は珍しいのか、あれこれほしがる。


すでに西園寺の腕の中には5つくらいの食べ物でいっぱいだ。


「スイカ持てなくなるよ…?」


「――!!沙羅が…」



おそらく出店に気を取られてスイカのことをすっかり忘れていたのだろう。


「…私に持たす気?」


私に持たそうとするから満面の笑みで言ったら、西園寺は私から顔を反らして黙々と食べだした。


「はぁ…。」


私は一つため息をつくと、西園寺の腕のバナナチョコを取った。


「私も食べてあげるよ。」


そう言って、階段に腰かけた。