ピアニストと野獣

「なーんだ!ただの幼なじみか!」


納得した陸は、自分のいたサマーベッドに再び腰を下ろした。


「幼なじみ?沙羅ってドイツにいたんだよね?…アイツ日本人だったし。…何で?」


腕を組んで唸っている西園寺。


今日はビックリするくらい鋭い。


でも隠すようなことでもないし、私は話し出した。


「大ちゃんのお母さんと、私のお母さんは友達で、よく大ちゃん連れてドイツに遊びに来てたの。それも小さい頃の話で、中学上がる頃にはドイツに来なくなったよ。」


そう、お母さんの友達の息子。


お母さんの…。


思わずお母さんの顔が頭を過って、涙が出そうになった。


だけど、西園寺によって、それは私の頬を流れることはなかった。


「じゃあ、遊ぶぞ!!」


「え?この話の流れでそれかよ!」


西園寺は私の腕を引っ張って海に走る。


この時初めて西園寺に感謝をした。

(初めてなの!?by知秋)