ビックリする私を尻目に西園寺は
「なーんだ!」
と言って私から離れた。



な、何?


私が眉間にシワを寄せて西園寺を睨むと、西園寺は気にするでもなく、ヘラッ…と笑った。


「沙羅が泣いてるのかと思ってさぁ…。」


「な、泣く!?」


「その顔じゃあ家でも泣いてない感じだし。」


「―――!!」


西園寺は目を細め、私の頬に手を添える。


「泣けばいいのに。」


「だって…」


私は思わず目を伏せる。


私が泣かないのは、泣いてしまえばお母さんが死んだことをリアルに思い知らされそうだから。


「――昨日、お母さんが帰ってきたの。……傷だらけでかわいそうで…。棺の中のお母さんは眠っていて、今にも起き上がって…笑顔で……笑顔で……『ただいま』って…言いそうで……」


途中から目から涙が溢れてきて、うまく話せなくなってしまった。


それでも西園寺は静かに聞いてくれた。


「な、泣きたくなんか……ないのに…。」


ボロボロの顔を見せたくなくて私は西園寺に背を向けた。