「まぁ、前からだけどね…。」


私が苦笑いをしたら、稲葉さんは鼻で笑ってキッと私を睨んだ。


「あなたバカじゃないの?」


「え゙。」


「あんなに想われて羨ましいよ。私も誰かにたくさんの愛がほしいな…。」


いつも何を考えてるのか分からない稲葉さん。


今も稲葉さんが何を考えてるのか分からないけど、何かあるのは確かなわけで…


「何かあったの?」


「え?何で?」


「な、何でって…。」


稲葉さんがはぐらかすので、それ以上は聞けなかった。


「じゃ、私行くから。」


そう言って稲葉さんは私の元を離れて行ってしまった。


私が「うーん…。」と唸っていると担任の先生が走ってきた。


「あれ?先生どうしたんですか?」


キョトンとする私を先生の言葉で一気に変わってしまった。



「お母様が亡くなったそうよ。」


「は?」