ピアニストと野獣

私は急いでポケットから手鏡を出して顔を見た。




―――うわぁ…。


トマト並みに真っ赤だぁ…。


私は手鏡をしまいながら西園寺の方をチラッと見たら、西園寺はニヤリと笑っていた。



も、もう!


「西園寺のアホ!」


私がその場から去ろうとしたとき、後ろから陸が

「バカンスは?」


何て言うから私は振り返って


「絶対行かない!」


そう言って踵を返した。



てか何で私があのアホ西園寺にドキドキしなきゃいけないのよ!


私は廊下で一人大きなため息を吐いた。


「ため息吐くと幸せが逃げるよ?」


「!!」


ビックリして振り返ると、後ろに稲葉さんが立っていた。


「最近知秋様と仲がよろしいですねぇ。」


稲葉さんは私にスゴい嫌味っぽく言った。