ピアニストと野獣

「…。」


私は黙って西園寺から顔を背けていたら、掴まれていた手が軽くなった。


「ごめん。」


「ん…。」


私は西園寺に顔を向けることなく、荷物をまとめた。


「━━沙羅。」


教室を出ようとしたときに西園寺にまた声をかけられた。


「今は、空を好きでもいい。でも、俺を好きにさせてやる。…絶対にな!」


「…。」


バタン!


私は何も言わずに音楽室をあとにした。


━━━全く…。


今日は何の日なのよ!!


私は頭をかきながら長い廊下を歩いた。