ピアニストと野獣

「――――ら……沙羅!!」


「あっ!ご、ごめん。」


突然頭を過ったのは、小さい頃、日独合同音楽合宿に参加した時の記憶だった。


確かあの時ホームシックになってピアノが嫌になったんだ。


そう言えば、あの男の子は桜南学園初等部の制服を着ていた。


多分同い年だった気が…。


名前は…。


「何考えてんの?あっ!そう言えば、小学生の時音楽合宿に参加したんだけど、今の沙羅みたいにピアノが嫌いになって弾けない子がいたんだよねー。」


「…。」



「それで、その子の手を、今みたいに引っ張ったんだよー。」


確か…



「チアキ。」