ピアニストと野獣

私は西園寺の元に小走りで駆け寄った。


「ご、ごめんね。…本当に送ってもらってよかったの?」


「あぁ…別に気にすることじゃないよ。…ほら、こいつを見て。」


笑顔で指を指す方には車に乗り込む陸がいた。

私たちの視線に気付いた陸は手まねいて「早く乗りなよー!」と言っている。


「あ、うん。」


そう言って手を上げた後、西園寺に目線を戻した。


「あいつは気を使わなさすぎるんだけどね。」


あきれ顔の西園寺。


まぁ、陸らしいよね。


「さ、乗りな?ちゃんと送るから。」


西園寺はドアの上に手をかけながらそう言った。