ピアニストと野獣

うん。

何か色々あったけど、おじい様はいい人でよかった。


てか、東藤さんと結婚…とかなんないよね…。


「ならないから安心しろ。」


「え?」


顔を上げると東藤さんが横に立っていた。


――そっか。よかった。


「て、心読まないで下さい!」


「ははっ。…読まずともお前の顔を見れば分かるさ。」


「え゛…。」


そんなに顔に出てたの…?


「…ともあれ、そんなことにはならないよ。おじい様のただの思い付きだから。」


「そうなんですか?」


隣の東藤さんの顔を覗き込むと私にニコッと笑った。


「そうだよ。いつものことだから気にしないでくれ。…あっ。車が来たぞ。じゃあな。」


「あっ、はい。今日はありがとうございました!」


私は頭を下げて、西園寺の元に走っていった。