ピアニストと野獣

「ん?どうした?」


陸は突然止まった私の方を不思議そうに見た。


「あ…。いや、何でもない。」


そう言って、陸と別れ自分の席に向かった。


あの人の横を通り過ぎ、席に座り楽譜を開けた。


―――気付くかな…?



「沙羅…?」



!!


顔をあげるとあの人がこっちを見ていて、また言った。


「やっぱり沙羅じゃないか!声かけなさい。」


そう言いながら近付いてきたこの人は……



「お父さん…。」