ピアニストと野獣

「大丈夫?」


座っていた男の子が立って、手を差しのべた。


―――この声って…。


そう思って顔をあげると思った通り。


「西園寺!」


ビックリしている私を尻目に、西園寺はニッコリと笑い、私の手を拾い上げて私を起こした。


「何で知秋がいるんだよ。」


腕を組んでブッスーとしている陸が口を開いた。


そんな陸をチラリと見て、西園寺は挑戦的な目を見せた。


「何でって、ただここのハンバーグを食べに来ただけだよ。」


「ハンバーグ?」


「そ。ハンバーグ。美味しいんだよ。とても柔らかいし、何よりデミグラスソースが濃厚なんだ。」


「西園寺もここのハンバーグのファンなんだ!」


二人の会話を聞いていた私はここで割り込んだ。