そして私は、泣き続けていた。



徐々に人は減ってゆき、いつもの光景が戻ってきた。



それでも私は、その場から動けずにいた。



足は動こうとしない。



涙も、止まろうとはしない。



なにも、伝えられなかった。



一番大事な言葉を。



全てを覚悟した貴方に。



私も覚悟を決めたと。



ーーー「平穏なこの国を、もう一度この目で見たいものだな。」ーーー



一平さんの言葉が蘇る。



胸には後悔ばかりが押し寄せる。



「いってらっしゃい。どうかご無事で…。」



届かなかった言葉が、通りすぎていく人々と一緒に消えていった。



あの時、逃げた私は子供でした。