結局私は、シュウの言葉に背いて、救急車を呼んだ。

だって、シュウの方が大事だから。



シュウがこんなことをしたのは、私を神崎から守るためだ。

今ならそれがわかるけど、あの時は頭の中がゴチャゴチャしていて、何が起こっているのかさえ、ほとんど把握できていなかった。



あれから一週間、シュウは眠ったままだ。



担当医師は銀縁眼鏡に白髪、小柄な中年男性。

彼の口から語られたのは、『手は尽くしましたが……』から始まり、『残念です』で終わる病状説明だった。



自発呼吸があるから、脳死ではないとか。けれど目を覚ます確率はゼロに近いとか。

良くわからない。


でも、シュウは眠ったまま、ただ、死を待っているのだと、そう言われているような気がした。