レイジのところで、傘だけでも借りて来たら良かった。
 全身満遍なく濡れてしまった。


 ビニール傘購入も考えたけれど、もうこれ以上濡れようがないからいいか、別に、と思い直す。

 濡れた衣服が肌にベッタリと張り付く感覚も、慣れてしまったのか不快ではなくなった。

 節約、節約。


 降りしきる雨の中、ゆらゆらと歩いた。
 20分ほどで、目的地である総合駅に辿り着いた。


 前回家出した時も、ここへ来た。
 お金を稼ぐ為に。

 その時は、セックスしてお金を貰えれば誰でもいい、そう思っていた。

 けれど、私の感情は自分が思っているほど、鈍くなくて。
 最初に声を掛けて来た、コッテリと油の浮いた中年男について行ったはいいけれど、行為直前でどうしても嫌になって逃げ出した。


 私にも、心、あったんだ。


 そんな風に思った。