─カチッカチッ…カチッカチッ…



静かな室内にペンをノックする音が響く。



─カチッカチッ…カチッカチッカチッ…



『………』



最初はスルーしていた右京もあまりのしつこさに目だけ動かして睨む。



─カチッ…!



それに気付いた彼はペンをノックする手をピタリと止めた。



…うっ…こっち見てるし…!



慌てて視線を反らしたが『クロウ…。』と自分を呼ぶアランの声に、右京はビクッと硬直する。



不自然な程ゆっくりと顔を上げ、『…なに?』と白々しく答えた。



右京は“そろそろ”だと直感的に思い、半分逃げの体勢を取りながら彼を見る。



『俺は悩んでるんだ…。』



右京は“来るぞ、来るぞ”と思いながら『何を?』と言ってみる。



“何を”なんて彼には判っているのだ。



なんせ、ここ数日間“それ”についての話しかアランの口からは出ないのだから…。